歯を失ったらどうなるの?
もう残せないの?
抜歯に至る理由は様々ですが、
歯冠部が崩壊するような大きな虫歯になっている
歯根が破折している
歯根の化膿が難治性である
歯周病が進行してしまっている
事故などで抜けたり折れてしまった
など、各科の専門医と連携しても残せないと判断される場合は周囲の歯や歯茎や骨などへのダメージが大きくならないうちに抜歯すべきです。
歯を抜いてしまって失った場合には
食事がしにくくなる
見た目が悪くなる
長期的には噛み合わせや歯並びが変化しやすくなる
虫歯や歯周病を引き起こしやすくなる
顎関節症や頭痛を誘発することがある
などのトラブルが徐々に起きてしまいます。
これらのトラブルを回避するために失われた歯を補う治療は必要なのです。
インプラントについて
インプラントとは?
「歯を失う」ということは歯冠(歯の見える部分)と歯根(歯茎の中に埋まっている部分)を両方なくすことです。
インプラント治療とは、失われた歯根部分を「インプラント体(フィクスチャー)」とよばれる人工歯根で補い、歯冠部分は「インプラント上部構造」とよばれる人工歯で補う治療です。
インプラント治療のメリットは?
- 他の健康な歯を削ったり、装置をかけたりしないので、残された歯に過剰に負担をかけることがない
- 入れ歯に比べ違和感が少ない
- 残された歯の治療が必要になった場合に複雑になりにくいので、長期的には治療負担が少ない
インプラント治療のデメリットは?
- 骨を削る手術が必要である
- 他の治療より期間がかかることが多い
- 他の治療より治療費がかかることが多い
インプラント治療の流れは?
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01. カウンセリング
治療計画、流れ、かかる費用や期間、メリットとデメリット、他の治療法についてお話ししたします。
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02. 術前治療
歯周病や虫歯、根の化膿などがあればあらかじめ治療をする必要があります。
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03. 主治医照会
全身疾患などお持ちの患者様はかかりつけ医との連携を取ります。
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04. CT撮影
インプラント予定部位とその周囲の骨の状態を精査します。提携の医療機関にて撮影します。
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05. 手術説明
CTをもとに決定したインプラントの設計と、骨の不足がある患者様はその治療法について説明いたします。
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06. インプラント1次手術(2回法)
顎の骨の内部に人工歯根(フィクスチャー)を埋入します。骨の不足がある患者様は同時に骨の増大を図ることがあります。
術後2週間で2~3回程度抜糸と消毒にいらしていただきます。
同日にヒーリングアバットメントを装着する1回法という術式もあります。(後述9参照) -
07. 治癒期間
埋入したインプラント体と顎の骨の結合が十分になるまで待機します。上顎は4~6ヶ月、下顎は3ヶ月かかります。
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08. オッセオインテグレーション
(骨結合)の確認治癒期間経過後にレントゲンを撮影しインプラント体と周囲の顎の骨の結合が十分であるか確認します。
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09. インプラント2次手術
(2回法の場合のみ)歯茎を切開し、インプラント体にヒーリングアバットメントという装置を装着します。術後1週間で抜糸します。
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10. 治癒期間
歯肉の形態が安定するまで待機します。術後2~4週間かかります。
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11. インプラント上部構造の印象採得
インプラント上部構造(人工歯)を製作するために型どりをします。
デジタルスキャンでの方法と粘土状のシリコーンを使用した手法があります。 -
12. インプラント上部構造の装着
歯科技工所に依頼し完成した上部構造(人工歯)をスクリューを用いてインプラントに締結します。
型どりの後、形態や噛み合わせの確認で治療回数がかかることがあります。 -
13. 上部構造装着後の経過確認
装着した上部構造の経過とセルフケアの程度を確認いたします。異常がなければメインテナンスへと移行します。
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14. メンテナンス
3ヶ月に一度程度の間隔でご来院いただき、清掃とセルフケアの指導をいたします。
骨不足の対処法
インプラント治療の際に、術前に支えとなる骨の検査をいたしますが、
抜歯に至るまでの経緯によっては感染や炎症の結果骨が大きく溶けてしまい、インプラントを支えるのに十分な骨が残存していないことも多くあります。
また、上顎の骨の内部には「副鼻腔」という空洞、下顎の骨の内部には「下顎管」という神経(下歯槽神経)と血管(下歯槽動静脈)が入った管が存在します。
まずはリスク回避のためにショートインプラントという短いインプラントや細いインプラントを使用することを検討しますが、それでも骨が不足している場合は支える骨を増やす手術が必要になります。
サイナスリフト/ソケットリフト
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上顎には骨の上に副鼻腔という空洞があり、この大きさには個人差があります。
副鼻腔が下方に大きく、骨の上下の高さが不足している場合(抜歯してから長期間経過すると副鼻腔が大きくなります)には副鼻腔の処置を併用して骨を増やします。
人工骨と人工膜を使用する術式が主ですが、自家骨移植や、人工骨なしで再生を図る術式もあります。
GBR(guided bone regeneration)
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上下顎に関わらず骨の幅が不足していてインプラントが骨からはみ出してしまう場合には、インプラントが骨に囲われるように幅を増やす処置をします。
とくに前歯部では抜歯後に骨が薄くなってしまうことが多くあります。
人工骨と人工膜を使用する術式が主ですが、自家骨移植や、人工骨なしで再生を図る術式もあります。
特殊なインプラント治療法
抜歯即時埋入
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歯根を抜歯した後、即時に抜歯窩にインプラント体を埋入する術式。
抜歯後に1次手術までに待機するデメリットが大きい場合に行う。骨の状態によっては適応とならない場合も多い。
外科処置の回数が1回減り、抜歯後待機するはずの治癒期間が短縮される。
埋入即時荷重
- 1次手術時に埋入したインプラントに専用のアバットメント(中間構造体)を取り付け、さらにその上に仮の上部構造を製作する術式。手術直後から固定された上部構造が装着されるが、骨、歯茎、噛み合わせの状態など、適応条件を慎重に判断する必要がある。
ガイデッドサージェリー
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手術前にCTで得られた顎骨のデータと口腔内スキャンで得られた歯のデータを合成しインプラントの手術をシミュレーションします。安全に手術できるシミュレーションを作成後、手術用ガイド(ドリルで削る位置を指示するマウスピース)を製作して手術に備えます。
※ガイド製作に伴い別途治療期間と費用が発生します。
All-on-4(オールオンフォー)
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上下のいずれか片顎において、全ての歯を失った時に4本の人工歯根を用いて10~14本の上部構造を製作する術式。
人工歯根の数を減らすことで治療費を節約できるが、長期経過やリスクを想定し、人工歯根の数を6~8本とする場合もある。
インプラントオーバーデンチャー
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インプラント体に専用のアタッチメントを装着することで入れ歯の補助が可能となるよう設計する方法。
入れ歯の安定感を増したり、金具を減らすことができる。また、患者様ご自身で着脱可能であるのでセルフケアやメインテナンスが容易である。
メーカー
当院では、ストローマン社(スイス)、ノーベルバイオケア社(スウェーデン)という世界的シェア1位と2位のインプラントメーカーのインプラント体を使用しております。
他にも数多くのメーカーがございますが、以下の理由で使用しております。
- インプラントメーカーとして長い歴史があるので臨床実績が多い
- 多様なインプラント体の形状がある
- 日本国内、海外を問わず、施術に携わる歯科医師やメーカーの拠点が多い
- 製品のトラブル時にもメーカーのアフターサポート体制が整っている
インプラントの他に治療法があるの?
- 入れ歯
- ブリッジ
- 親知らずの移植
という治療法があります。カウンセリングの際にお伝えしますのでご比較ご検討ください。
リカバリー/トラブル
インプラント体の周囲には骨と歯茎が存在しておりますので、天然の歯が歯周病になるのと同じようにトラブルを起こすことがあります。(虫歯にはなりません)
初期のものをインプラント粘膜炎、進行したものをインプラント周囲炎といいます。
インプラント粘膜炎の治療
- セルフケアの徹底、歯科医院におけるプロフェッショナルケア、インプラント上部構造の形態修正など
インプラント周囲炎の治療
- インプラント周囲歯肉や骨の外科手術、インプラント体の整形、インプラント上部構造の再製作、インプラント体の撤去・再埋入など
その他に、上部構造締結スクリューの緩み・破折、上部構造自体の破折、インプラント体の破折などのトラブルが起こりえます。
よくあるQ&A
- MRIが撮れなくなると聞いたのですが?
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インプラント体や上部構造の金属の種類と大きさ・位置を考慮して、
MRI撮影時に身体に影響を与えるものではありません。
ただし、インプラントだけにかかわらず、口腔内の金属が撮影の際に影を映すことがあります。
その影がMRI診断の妨げとなる場合には撤去が必要です。撮影医療機関や撮影・診断担当者の判断によるものですので
定期的にMRIを撮影される患者様はご確認ください。
- 金属アレルギーなのですが?
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インプラント体の主要金属はチタンになります。チタンは金属の中でアレルギーを最も起こしにくいといわれていますので安心です。
医科の手術でも骨の固定にチタンを使用することがあります。
ご不安な場合はアレルギー検査の可能な医療機関をご紹介いたします。
- 高齢なのですが、インプラントは受けられますか?
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インプラント治療は20歳以上であれば年齢に上限はありません。
ただし、ご年齢とは別で既往症や基礎疾患、服薬状況によっては難しい場合がありますので該当する患者様はかかりつけ医に照会させていただきます。
- 前医で骨が少なくてできないと断られたのですが、難しいでしょうか?
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以前断られた理由が、骨の少ないことだけであれば、骨を増やす手術を併用すれば可能です。
- 引っ越して、過去にインプラント治療を受けた歯科医院に行けなくなりましたが、
見てもらえるのでしょうか? -
現在も日本国内でアフターサポートが受けられるメーカーであれば可能です。
当院で前医に診療情報提供書を発行依頼することができます。
- 老後、セルフケアができなくなった時はどうすればよいのでしょうか?
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インプラント上部構造のスクリューを逆回転すれば、インプラント上部構造は簡単に外せます。
介護者によるケアのしやすい形態に改変します。
- 痛いですか?腫れますか?
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痛みの感じ方は個人差があります。手術中は局所麻酔で痛みのないよう管理いたします。手術後の強い痛みは数日続きますが、鎮痛剤を処方いたします。
腫れの生じ方は術式によっても違いますし、個人差が大きいので事前の予測が難しいです。あらかじめ腫れが生じる可能性をふまえて治療スケジュールを検討すべきでしょう。
- 手術時間はどの程度ですか?
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純粋な手術時間は、術式によりますが60~120分になります。
局所麻酔も含めた術前準備と止血などの術後管理、術後注意事項の説明も含め、ご来院からお帰りまで120~240分かかります。
- 治療費の支払い方法は?
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現金、銀行振込、クレジットカード決済、PayPay決済で可能です。
デンタルローンをご希望の患者様は、カウンセリング時にご相談ください。
- 医療費控除の対象になりますか?
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対象になりますので領収証を保管なさってください。